子育てしながらMBA ー英語で学ぶということ

インプットは母国語でしたほうが学びやすいのか?

日本で履修できる海外MBAにはいろいろな種類があり、そのうちの大きな違いは日本語で学ぶか、英語で学ぶかではないでしょうか。私が通っていたアビタス経由でのマサチューセッツ州立大学のプログラムでは、基礎科目6つと、上級科目10つの合計16科目が卒業に必要でしたが、うち日本語を使ったのは基礎科目の授業のみでした。プログラムを通して、提出物やテストは全て英語、上級科目になってからは授業も全て英語でした。二つの言語で新しいことを学ぶ、という体験をしてみて思うのは、知識は母国語である日本語で学んだ方がよく、概念的なことはアウトプットに使う言語と同じもので学んだ方が良いということです。

会計科目や為替を学ぶ科目など、とにかく知識や単語の理解が必要な科目は、日本語で学んだ方が理解が早く応用もしやすかったです。あまり普段は意識していないですが、人間って母国語で学んでいると、知らない単語や表現が出てきてもそれなりの確度で類推ができるんですよね。それができると、一旦ざっと読んで概要を掴み、後からわからなかったところだけ調べて理解を完璧な状態にすることができます。一方で、それを得意ではない言語でしようとすると、前後の文脈で単語の意味を類推するのが一気に難しくなり、知らない単語と出会うたびに調べ、また文章に戻るという状態になって、学びの進みが異常に遅くなります。例えば、International Financeの授業でLiborというさまざまな金利の基礎になる銀行間取引レートに関する不正の記事を英語で読んで感想を書くというレポートがあったのですが、「swap」など金融に関する単語が出てくるたびに記事を読む行為が中断されて、記事全体の理解が進まずとても苦労しました。結局、日本語で一旦その不正について理解をしてから、改めて英語を読むという形にしてなんとか乗り切りましたが、「母国語で学んだ事前知識がある」ということが、第2言語で何かを学ぶためにどれだけ重要かということを思い知らされました。

一方で、MarketingやStrategy developmentなどフレームワークを学んだ上でそれを応用していくような科目は、英語で学んだ方がアウトプットを作りやすかったです。例えば、CapabilityとCompitencyは戦略立案の講義によく出てくる単語ですが、辞書でひくとどちらも「能力」とされています。でも実際には、微妙にニュアンスが違っているようで、テキストや講義ではそのニュアンスに応じて適切に使い分けがされているのです。単語のニュアンスをレポートに反映させる必要があるので、インプットも英語でしてしまった方が楽でした。あと、概念的な話は日本語の本を読むととても難しい単語やまわりくどい表現で書かれているものも多くあったりして、何が重要なのか受け取りきれないこともありました。それと比べると、英語で学ぶ場合、細かな言語の知識がない分、幸か不幸か単純化して理解することになるため、ポイントを掴みやすくなるなぁという実感もありました。日本語だと1→2→1’→3→3’と書かれていることが、英語だと1→2→3のように重要なポイントだけで話の流れが単純化された状態で理解できるというイメージです。英語は比較的シンプルな表現、構成が好まれるようなので、単純化した理解でもそれほど困らずにレポートを作ることができました。

2年間のMBAで英語は上達したのか?

どの科目でも山のようなテキストやCaseを読み、たくさんのレポートを書きましたが、英語の能力がそれほど上達した実感はありません。テストで問題の言い回しや表現がテキストから変更されていたり、「以下の例のうち●●のコンセプトに当てはまるものか?」のような読解力が必要な問題は結構な確率で間違えますし、文章を書くときにはスッと出てこないし、三単現のSを忘れたり、theとaを間違えたりします。会話に至っては、何年もオンライン英会話をしているのに、結局単語を並べただけの会話になっていることも多いです。ただ、TOEICの点数は入学前から100ポイント上がって、初めて900を突破したので、読むスピードや基礎となっている単語量はある程度増えたのかもしれません。

アメリカで働いている人のTwitterなどを見ていても、何年滞在していても英語の能力には限界を感じられるようで、第2言語を母国語と同じくらい操れるようになるには相当な努力と年月が必要なのだなと改めて感じています。とはいえ、使っていかないと伸びもしないので、恥をかきつつ、引き続き頑張っていきたい所存です!